求人広告でよく見る用語解説「みなし残業」
求人広告コピーライターを約14年間やってきた僕が、求職者の方たちに天職を見つけるための転職活動に必要な情報を発信していくコーナー。今回は、「みなし残業」についてです。
「みなし残業」とは
「みなし残業」とは、あらかじめ残業時間が決められている「未来の残業」のことです。あらかじめ、「ひと月にこれくらい残業してもらう」と決められている、みなしの残業となります。これくらいの部分が固定されているため、「固定残業」という言い方をする場合もあります。月20時間とか、月40時間とかが多いです。
みなし残業分の残業代は、賃金や手当に「みなし残業代」や「固定残業代」という名前で、必ず組み込まれています。
残業代は、みなし残業とされている時間を超えた分のみ支払われることになります。つまり、月20時間のみなし残業が設定されている場合、20時間を超えた分の残業から残業が支払われるということです。
必ず残業させられるのか
そういう制度ではありません。
ひと月の残業時間がゼロでも、定められた分の残業代があらかじめ給与に組み込まれていてラッキー、という制度です。企業が社員に、余計に残業代を払うことが大前提の考え方となっています。そのため、なるべく残業しないように、決められた営業時間内に仕事を終わらせたほうが得です。
ただし、製造業をはじめとした残業がそもそも発生しない会社では、機能しないため(社員に存在しない残業代を払う機会が多すぎるため)、みなし残業といった制度は取られていません。
そこそこの残業が発生する会社が、この制度を使っている場合が多いですね。
なぜ、この制度があるのか
いい加減な転職アドバイスサイトでは、「みなし残業がある会社=ブラック」と語っていますが、それは誤りです。
この制度には企業側にメリットがあり、その1つが「バックオフィスで煩雑になる社員1人ひとりの残業代計算を簡略化できること」です。社員数が多い会社、支店が多い会社ほど、細かい確認や計算が発生する残業時間の給与への反映作業をほぼゼロにできるんですね。
もう1つのメリットは、「ムダな残業時間の削減」です。意味もなく会社に残り残業代を稼いでいる社員っていませんか。みなし残業制度を取り入れることで、ダラダラ仕事をしていることが損になり、仕事を早めに切り上げるほうが得になる。こうなると必然的に社内全体のパフォーマンス向上につながるわけです。
みなし残業時間の相場
・月20時間 … そもそも残業が少ない
・月30時間 … 繁忙期があるところに多いかも
・月40時間 … 営業職など残業多めのところが多い
・月80時間 … 指導が入るレベル、危険
みなし残業の求人広告上の表記
みなし残業については、全国求人広告協会に所属している求人媒体においては、求人広告に必ず記載しなければならないことになっています。記載していない場合、給与額を偽っていることと同義だからです。
月給26万円以上
※上記金額には月20時間分のみなし残業代5万円が含まれています。
※残業が月20時間を超えた分については別途残業代を支給いたします。
こんな表記(↑)になっているはずです。
みなし残業が求人広告に書かれていない、面接で初めて言われた、といった企業がありましたら、意図的に隠そうとしているか、経営者や採用担当のリテラシーが相当低いので、注意したほうがいいと思います。
なぜ、みなし残業があるとブラックといわれるのか
この制度を悪用して社員の給与を減らそうとしている悪徳経営者がいるためです。「ウチはみなし残業制だから残業代は出ないよ」なんていう会社は、残念なことですが、少なからず存在します。僕が所属していた『エン転職』の場合、制度を悪用していることなどがユーザーからのクレームが発覚し、是正されない場合は取引停止になっていました。
なので、フツウの良識ある求人媒体では、こういった悪徳企業の求人広告は掲載されないのですが、それ以外の媒体では掲載されてしまう可能性があります。そういった被害から「みなし残業がある会社=ブラック」というデマが生まれたと思われますが、正確には、「制度を悪用している一部の企業は存在するが、基本的には、残業を減らす名目で作られた制度である」ことをご理解ください。
今回は以上になります。
この記事が、あなたの転職活動の一助になれば嬉しいです。