求人広告のひみつ

求人コピーライターが教える、正しい求人広告の読み方

求人広告キャッチコピー例「お客様はホトケさま」(ドライバー職)

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求人広告制作歴14年の管理人が、広告制作のウラ情報を交えて転職活動のお役立ち情報を発信している『求人広告のひみつ』。今回は、採用企業向けの情報。採用難易度の高い求人において、僕が採用成功させた広告訴求と思考プロセスとがんばったなというキャッチコピーをご紹介します。

 

どんな職種の求人だったか

遺体配送のドライバー募集でした。
これがどういう仕事かというと、病院で亡くなられた人はお葬式に出すために、自宅か葬儀場に運ばなければなりません。その配送を担当する仕事です。ほとんどの場合、葬儀場と提携している専門の配送会社がこの仕事を担当し、そのドライバー職の募集でした。つまり、キャッチコピーは「お客様は神様です」のパロディなのですが、「ホトケ」は遺体のことであり、ブラックジョークでもあったりします。

 

ぶっちゃけ、応募が来ない

死体を運ぶ仕事なので、マイナスイメージしかないですよね。同じドライバー職なんか他にもたくさんあるので、わざわざここに応募する必要がありません。転職サイトに掲載して応募ゼロだったことも一度や二度じゃないとのことです。

さらに、遺体とはいえ「人」としてていねいに扱うことが求められる仕事でした。荷物のように乱暴に扱ってしまっては(荷物も乱暴に扱っちゃダメですが)、依頼主からクレームが発生するとのこと。不人気な上に、細かい気くばりの利く仕事が求められるわけでした。

さらにさらに、待機時間が長く、深夜はそこまでないそうですが夜の仕事も多い。9時から18時まで、といったシフトでもありません。仕事として病院でなくなったら、すぐに運ばなければならないからです。

「誰がやるんだ、この仕事」と悩みました。

過去には、仕事内容の詳細を伏せた求人広告を出して応募を集めたこともあるそうですが、面接で本当のことを話すと、みんな辞退されてしまったそうです。

 

ターゲットは、タクシー経験者に設定

いろいろ考えて、僕はこの求人広告のターゲットを「タクシードライバー経験者」にしようと思いました。

正確には、「タクシードライバーをやっていた(いる)けど、ずっとお客さんを探して追いかけないといけないワークスタイルや、面倒なお客さんによる接客トラブルに嫌気がさしてしまった人」、ですね。

その理由ですが、待機時間の長さや夜にかかる仕事と、お客様に対してていねいに接することに慣れており、この仕事に欠かせない素養がすでにあると考えたからです。

そして、マイナス面ばかりと思われがちなこの仕事ですが、良いところもあるのです。それが次の内容。

・暴言を吐かれたり、無茶な要求を言われたりしない(死んでるから)
・金払いがいい(配送料は高め設定)
・支払いトラブルがない(遺族による銀行振り込みだから)
・目的地がはっきりしている(自宅か葬儀場)
・お客さんを探さなくていい(依頼されて配送するだけ)
・孤独ではない(仲間と2人1組で対応。担架に載せた遺体を運ぶため)
・強盗に怯える必要なし(車内にお金がないから)

このようなことをプラスとして受け取れる方は限られており、素養と合わせて該当するのが、「タクシードライバーをやっていた(いる)けど、ずっとお客さんを探して追いかけないといけないワークスタイルや、面倒なお客さんによる接客トラブルに嫌気がさしてしまった人」と考えたのです。

 

どんな求人広告になったのか

「お客様は神様です、という言葉の精神は見習わなければと思いつつも、お客様なら傍若無人が許されるわけではない」とはじまり、「でもご安心ください。この仕事でお乗せするお客様に限ってはそんなことはない」と続きます。

「運転手に罵声を浴びせない」「話しかけなくていい」「目的地がはっきりしている」「金払いがいい」「帰りにお客さんを拾う心配をしなくていい」「1日数回の配送しかしない」といったメリットを伝えて、「本当に仏様のようなお客さん」と言いつつ、ネタばらし。

仕事のイメージは悪いかもしれないですが、さっき伝えたようにメリットも多く、家族に感謝をされる仕事ということを伝えるボディコピーでした。

 

最後に

一見、マイナス面ばかりに見える仕事でも、その仕事にやりがいを感じて従事している人はいます。固定観念にとらわれず、デメリットの逆を見て、そのメリットを感じられる人はどういう人かを考えて、広告を作っていく。すると、フツウにやっては応募がまったく来ない求人でも、応募を集めることができるのです。

それが、求人広告コピーライターという仕事。

ちなみに、こちらの求人広告では、狙った通り、接客に疲れたタクシードライバー経験者が応募に来て、採用されました。

 

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